市民版環境白書2022グリーン・ウォッチを発行しました(2022年6月)

市民版環境白書2022グリーン・ウォッチ

2016 年の設立以来、毎年発行してきた市民版環境白書「グリーン・ウォッチ」も今年で7冊目になります。その目的は、①政府と異なる視点から、日本の環境の現状や、環境政策の課題、問題点を分析し、多くの人に知ってもらうこと、②政府とは異なる視点からの情報を提供しNPO/NGOの考え方や活動を知ってもらうことで、環境問題への関心を高め、解決に向けた市民の参加や行動を促すことでした。

この7年間で、日本の環境政策のうち、特に気候変動対策やプラスチック対策などは世界の動きに連動する形で、以前より少し進展したように見えます。しかし、短期的経済成長に重きを置いた、産業界寄りの政策であることに変わりはなく、私たち市民団体の声が政策に反映されることは少ないのが実態です。また環境問題への市民の関心は以前より高まったようですが、解決に向けた行動は、一部若者の間では広がっているものの、全体的にはまだこれからというところです。

そうした中で、今年の市民版環境白書は、これまでと同様に、環境の現状や課題、私たちにできることや政策の方向性について述べることと併せて、具体的な政策の問題点やすでに動き出している国内外の政策の一部についても紹介しています。

第1章では、脱炭素社会に向けた対応の主軸となる気候変動と再生可能エネルギーについて述べています。気候変動に関しては最近出されたIPCC 第6次報告の概要紹介やそれらを踏まえての国内対策の問題点について、また再生可能エネルギーでは国内外の現状や今後地域や個人でできる省エネルギーへの取組について述べています。

第2章では、脱炭素社会の構築に欠かせない第一次産業のうち、農業と食の現状や課題、林業の現状や課題、そして今後の方向について述べています。農業や林業はこれからの脱炭素社会を支える重要な産業であり、私たちの日々の生活に密接に関わる「食」も脱炭素社会を作る上で重要な課題であることから、それらの今後の進め方についても述べています。

第3章では、プラスチックと化学物質問題に関わる国内外の最近の政策動向を中心に述べています。プラスチックは市民にもわかりやすく取り組みやすい課題であることから、国内外で様々な施策が展開し始めています。しかし、化学物質は身近にありながら理解が得にくい課題なため、国内での施策は進んでいないことから、それらへの対
応と提案をEU の施策を参考に述べています。

第4章では、東京電力福島第一原発事故から11 年が経過した今でも、廃炉、汚染水、人々の暮らしなど課題が山積している現状と、政府や東電の対応の遅れがそれらの問題をますます深刻化させ、脱炭素化にも影響を及ぼしていることを指
摘しています。

第5章では、地域で進められている脱炭素に向けた様々な先進的な取組を紹介しています。そして最後に、この1 年のグリーン連合の活動を紹介しています。

グリーン・ウォッチ2022 目次

はじめに

漫画「グリーン・ウォッチ」2022

第1章 気候危機からの脱却に向けて

第1節 気候危機の現状と課題

1.科学からの警鐘 ~IPCC第6次評価報告書発行~
2.COP26で石炭火力の削減に世界が合意
3.日本の気候変動政策の課題
4.これから日本に何が求められるか

第2節 地域の脱炭素化に向けた持続可能なエネルギーへの取組

1.再生可能エネルギーの現状と課題
2.省エネルギーのすすめ

第2章 脱炭素に果たす第一次産業の役割

第1節 農業と気候変動

1. 気候変動に正と負の両面を持つ農業
2. 脱炭素化に向けた農業の展開
3.消費が農業を変えて気候変動対策に貢献
コラム バイオ炭による Jークレジット~あいとうエコプラザ菜の花館で推進中

第2節 身近な「食」からの脱炭素化

1.海外に依存した日本の「食」の現状と課題
2.食に関わる温室効果ガス(GHG)排出量の現状と課題
3. 脱炭素社会に向け、私たちにもできること
コラム 食品ロスをなくすための方法

第3節 土砂災害を誘発する大規模林業~希望は小規模分散型の「自伐型林業」

1.プランテーションの伐採に頼る再生可能エネルギー
2.クローズアップ現代で特集
3.小規模林業を切り捨て、大規模林業へ ~「効率化」を進める相次ぐ法改正
4.被災した球磨川流域〜崩壊箇所の7割以上が林業施業に起因
5.環境保全型の「自伐型林業」

第3章 国内外の環境政策の動向と課題、方向性

第1節 プラスチック

1.プラスチック対策の進展とプラ新法のポイント
2.政策効果とその発現に向けて
3.プラスチック対策が踏まえるべきプラスチック問題の特徴
4.既存政策アプローチの特徴と限界
5.プラスチック対策の次なる方向性

第2節 脱炭素を含む持続可能な化学物質戦略の必要性

1.EUの化学戦略の概要
2.日本の課題

第4章 脱炭素社会に原発はいらない

第1節 原発の視点から見たエネルギー基本計画の問題点

第2節 原発が気候変動対策の足かせになっている

第3節 福島第一原発の廃炉の現状

第4節 合意なき処理水の海洋放出

(1) 非民主的な政策決定プロセスであること
(2) 汚染水にはトリチウムのほかにも有害な放射性物質が基準を超えて含まれている
(3) 海洋放出の前に汚染水を止水すべきである

第5節 福島の復興について

(1) 避難指示解除の現状と高いままの解除基準
(2) 解除しても復興が進まない現状
(3) 帰還を望まない人たちへの補償の遅れ

第5章 脱炭素社会に向けた地域の先進事例

事例1 日本国内におけるソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)導入の現状と課題
事例2 生活クラブ風車「夢風」と「生活クラブでんき」の取組
事例3 持続可能な地域社会の実現に向けた北海道下川町の取組

活動報告 グリーン連合この一年の活動実績

報告1.環境省との意見交換会
報告2.勉強会の開催
報告3.今年度の政策提言


2022年 5月25日 第1刷発行
編集者:グリーン連合「グリーン・ウォッチ」編集委員会
発行:グリーン連合
表紙絵:高月 紘