市民版環境白書2024グリーン・ウォッチを発行しました(2024年6月)

市民版環境白書2024グリーン・ウォッチ

2024年6月発行
2024年10月改訂

2016 年の設立以来、毎年発行してきた市民版環境白書「グリーン・ウォッチ」は昨年休刊となりましたが、今年は8冊目を発行しました。その目的は、①政府と異なる視点から、日本の環境の現状や、環境政策の課題、問題点を分析し、多くの人に知ってもらうこと、②政府とは異なる視点からの情報を提供しNPO/NGOの考え方や活動を知ってもらうことで、環境問題への関心を高め、解決に向けた市民の参加や行動を促すことです。

この9年間で、日本の環境政策のうち、特に気候変動対策やプラスチック対策などは世界の動きに連動する形で、以前より少し進展したように見えますが、問題は深刻化しており、その対策は大きな曲がり角を迎えています。短期的経済成長に重きを置いた、産業界寄りの政策であることに変わりはなく、私たち市民団体の声が政策に反映されることは少ないのが実態です。また環境問題への市民の関心は以前より高まったようですが、解決に向けた行動は、一部若者の間では広がっているものの、全体的にはこれからの取り組みがますます重要な状況です。

そうした中で、今年の市民版環境白書グリーン・ウォッチは、これまでと同様に、環境の現状や課題、私たちにできることや政策の方向性について述べることと併せて、具体的な政策の問題点やすでに動き出している国内外の政策の一部についても紹介しています。

市民版環境白書2024グリーン・ウォッチ [PDF]

表紙・目次 [PDF]

第1 章 真の脱炭素社会実現に向けて
・第1 節 気候危機の現状と課題 [PDF]
・第2 節 地域の脱炭素化に向けた持続可能なエネルギーへの取組 [PDF]
第2 章 原発推進は脱炭素社会を逆行させる [PDF]
第3 章 化学物質
・第1節 農薬の再評価制度のあり方を問う[PDF]
・第2節 プラスチック条約と有害化学物質規制の動向 [PDF]
第4 章 グリーンウオッシュをめぐる国内外の動向と日本の課題 [PDF]
第5 章 棚田から日本の環境と食料問題を考える [PDF]
(コラム)生物の多様性を育む農業国際会議(ICEBA)がめざすもの [PDF]
第6 章 持続可能な社会に向けた環境教育を市民社会の活性化につなげるために [PDF]

グリーン連合活動記録 [PDF]
グリーン連合会員名簿 [PDF]
グリーン・ウォッチ編集委員会・奥付 [PDF]

第六次環境基本計画案に対する意見「環境政策にもっと市民の意見の反映を!」

第六次環境基本計画案に対する意見「環境政策にもっと市民の意見の反映を!」

グリーン連合では、第六次環境基本計画案の意見募集(パブコメ)に対して以下の意見を公表し、提出しました。

環境政策にもっと市民の意見の反映を!

グリーン連合
2024年4月9日

環境やエネルギーに係る政策は、私たち市民の暮らしに直結する政策です。そのため、1992年6月に開催された国連環境・開発会議(地球サミット)において全会一致で採択された「リオ宣言」の第10原則には、「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。」旨明記されています。

また、この原則を条約にした「オーフス条約」では、環境に関する情報へのアクセス、意思決定における市民参画、司法へのアクセスへの権利が保証されています。(残念ながら日本はいまだに締約国になっていません。)

にもかかわらず、わが国では、従来から環境やエネルギー分野の多くの政策が、政府と特定の専門家・業界関係者により決定されてきた経緯があることから、私たち市民団体は、偏った政策形成過程の改善と、真の市民参画の必要性について要望を重ねてきました。

しかし、わが国では「参加」が権利であるという認識が希薄なことから、この分野における政策形成過程への市民の関与はいまだ不十分な状況にあり、特に最近はその傾向に拍車がかかり、環境政策の停滞を招いています。

その一例として、市民参加の進むEUでは、温室効果ガスの域内排出を2040年までに1990年比で90%削減することを発表するなど、世界は脱炭素に向けた動きを加速しています。しかし、パリ協定と整合性のない日本政府の現在の削減目標は、今後も国際的批判を浴び続けるだけでなく、地方自治体や企業、市民社会に対して間違ったメッセージを送ることとなり、その取組を大幅に遅らせ、気候危機を止めることを不可能にします。これは正しい情報が提供されていない一例です。

また、電力自由化の中でも電力市場を寡占している大手電力会社が持つ既設の原発や石炭火力発電所を維持するために、国民が知らない間に、政府と関係者の間だけで議論が進み、気候変動に逆行するような様々なエネルギー政策が決定されてきています。これは適切な市民の参画が行われていない一例です。

気候変動や原発を含むエネルギー、化学物質やプラスチック問題などは、すべて私たち市民の暮らしと密接に関わる問題であり、政策の影響を直接受けるのも私たち市民です。また現場での異変をいち早く察知できるのも私たち市民です。

そうした現場からの情報をもとに政策形成過程に市民が参加することで、政策の信頼性は増し、提案が多様化することでより良い政策の選択の幅が広がるだけでなく、政策の普及・実施段階での協力も得やすくなり、実効性が高まることも期待できます。

にもかかわらず、現在議論が進められている第六次環境基本計画案の中でも「政策決定過程への国民参画とそのための政策コミュニケーション、その成果の可視化が必要」(p.46)とし、その際の情報手段については書かれているものの、「自主的・積極的な活動を」(p.46)ということで、政策形成過程への市民の参加の仕組みについては全く触れられていません。またこれまでの環境政策でその成果の可視化がされたことはほとんどない中で、また政策の成果が出るには長い時間がかかる中で、どう成果を可視化していくのか不明です。

このように、環境政策形成過程での市民参画やそのための情報アクセスが不十分である状況は、国際社会の一員である日本として恥ずべき実態であり、少なくとも先進国において確立されたルールにも反することから、早急の改善を強く求めるものであり、少なくとも、今回の環境基本計画では、その仕組みについて明記することを期待します。

【参考】

〇1992年6月にリオで開催された「国連環境・開発会議」(地球サミット)において全会一致で採択された「リオ宣言」の第10原則

『環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。国内レベルでは、各個人が、有害物質や地域社会における活動の情報を含め、公共機関が有している環境関連情報を適切に入手し、そして、意思決定過程に参加する機会を有しなくてはならない。各国は、情報を広く行き渡らせることにより、国民の啓発と参加を促進し、かつ奨励しなくてはならない。賠償、救済を含む手法及び行政手続きへの効果的なアクセスが与えられなければならない。』

〇「オーフス条約」(正式名称:環境問題における情報アクセス、意思決定への市民参加及び司法へのアクセスに関する条約」)の第1 目的

『現在及び将来の世代のすべての人々が、健康と福利に適した環境のもとで生きる権利の 保護に貢献するため、締約国はこの条約の規定にしたがって、環境に関する、情報への アクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスへの権利を保証する。』

【意見書】第6次エネルギー基本計画(案)への意見

第6次エネルギー基本計画(案)への意見

2021年10月1日

グリーン連合 共同代表 藤村コノヱ、中下裕子、杦本育生
幹事 松原弘直、桃井貴子、坂本有希

  • 再生可能エネルギー100%を目標に2050年カーボンニュートラルを目指すこと

  • 全ての原子力発電所を廃止し、脱炭素電源は再生可能エネルギーだけにすること

  • 2030年までに石炭火力は全廃し、LNG火力も新規建設禁止とすること

  • 省エネルギーを大原則とし、ライフスタイルの見直しやエネルギーシステムの根本的な改革に取り組むこと

  • 民意を反映した市民参加の政策決定プロセスを制度として確立すること

意見書はこちら

【意見書】福島第一原発ALPS等処理水(汚染水)の海洋放出に強く反対します

【意見書】福島第一原発ALPS等処理水(汚染水)の海洋放出に強く反対します

2021年7月1日
グリーン連合
共同代表 藤村コノヱ、中下裕子、杦本育生

菅義偉政権は、4月13日、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」「地元関係者の理解を得ながら対策を実施することとし、海洋への安易な放出は行わない」旨のこれまでの地元関係者と東京電力、経産省間の約束文書を反故にして、福島第一原発で発生しているALPS等処理水(以下、「汚染水」という)の海洋放出を閣議決定しました。これに対し、福島県漁協連をはじめ、同農協中央会、同森林組合連、同生協連、地産地消ふくしまネットの5団体は、4月30日、意思決定プロセスへの遺憾の意を表するとともに、海洋放出に反対する旨の共同声明を発表しました。また、原子力資料情報室、原子力市民委員会、FoEジャパン、グリーンピースジャパンなどの市民団体からも反対の意見が発表され、さらに韓国、中国など周辺の国々からも反対の声が上がっています。

日本の環境団体の連合組織であるグリーン連合も、上記の非民主的な意思決定プロセスに加え、以下の理由により、汚染水の海洋放出に強く反対します。

意見書はこちら

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」に対する意見書の提出について

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」に対する意見書の提出について

グリーン連合
共同代表 杦 本 育 生
同    藤 村 コノヱ
同    中 下 裕 子
2021年5月14日

2021(令和3)年3月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」(以下「本法案」という)が内閣から提出され、今国会での成立が目指されている。

プラスチック廃棄物問題については、海洋プラスチック汚染の深刻化により国際的課題として取組みがなされ、2019年6月のG20大阪ブルー・オーシャン・ビジョンでは「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減する」との目標が明記された。

一方、2020年10月には日本でも「2050年カーボンニュートラル(脱炭素)宣言」がなされたことから、石油由来のプラスチックについても、脱炭素の観点からの取組みが求められる。

このような状況において、プラスチック問題の解決については、単に廃棄物管理の強化にとどまらず、「2050年カーボンニュートラル」への貢献も含め、プラスチックの大幅な総量削減と3Rの優先順位に従った循環利用の徹底を通じて、サーキュラー・エコノミー社会を早期に構築していくことが求められており、そのためには、大胆な施策を段階的・計画的、かつ着実に実施していく必要がある。

しかしながら、本法案では、2050年までの中間の年次における削減の数値目標が明記されておらず、規制的措置やカーボンプライシング等の経済的手法も含まれていない単なる促進法にとどまっており、極めて不十分である。

「グリーン連合」は、日本が2019年G20議長国として率先してサーキュラー・エコノミー社会を実現するために、本法案に下記内容を盛り込むことを提言する。

意見書(PDF)

【要望書】炭素税は、国民的議論も踏まえて、早期に導入を

2018年8月吉日

炭素税は、国民的議論も踏まえて、早期に導入を

「グリーン連合」共同代表
藤村コノエ、杦本育生、中下裕子

 近年、毎年のように異常気象現象が国内外で発生しているが、今年の夏の豪雨、熱波はまさに、異常そのものであり、気候専門家のかねてからの警告をも上回る規模で、多くの国民の生命・財産が奪われており、改めて、気候変動がもたらす影響の深刻さと、「パリ協定」を実現することの重要性を痛感している。

これまでも、日本の政府や企業は、温暖化対策にそれなりに取り組んできたが、肝心のCO2等温室効果ガスの排出量は、過去26年間の経済動向などを反映して、多少の増減はあるものの、殆ど減少しておらず(直近の2016年では、対策の出発点である1990年比で2.7%増)、気候変動に、より大きな責任を有する先進主要国の中では、唯一増加した国として、その責任が国際社会からも厳しく問われているところである。

安倍総理は、6月4日に開催された「未来投資会議」の席で、「もはや温暖化対策は企業にとってコストではない。競争力の源泉だ。温暖化対策はこれまで国が主導して義務的な対応を求めてきたが、脱炭素化を牽引していくためには、こうしたやり方では対応できない。ビジネス主導の技術革新を促す形へのパラダイム転換が求められている」と、これまでにない前向きな発言をしている。しかし、そのひと月後に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、「パリ協定」以前の、化石燃料や原子力発電を重視する政策であり、このことは、日本政府の「パリ協定」への取組姿勢を改めて問われる内容である。

現在、安倍内閣は、2050年80%削減に向けた長期ビジョンの作成に取り組んでいるが、この削減目標を達成するには、炭素税や排出量取引など「カーボンプライシング」と呼ばれる経済的手法の導入が不可欠であり、このことは専門家も長らく主張してきたことである。何故なら、世界的に見れば、既にこの政策を導入している多くの国では、温室効果ガスを削減する一方でGDPは増加するといった効果(デカップリング)が実証されているからである。

しかし、日本では経団連加盟の一部のエネルギー多消費産業と経済産業省の非合理的で執拗な反対により、いまだにこの政策は導入されておらず、このことは、国益を大きく損なうのみならず、次世代を担う子どもたちに、大きな負荷を背負わせる、極めて無責任な対応と言わざるを得ない。

私たちグリーン連合は、長年、現場で多くの市民や先進的な自治体・企業と連携して温室効果ガス削減に取り組み、研究も重ねてきた経験から、地球温暖化を食い止めるには、カーボンプライシング、特に炭素税の導入こそが最も有効な政策であると確信しており、その早期導入を強く要望するものである。

また導入に当たっては、公平・公正で全ての国民の幸福や社会の持続性のための炭素税となるよう、広く国民的な議論を展開することを強く要望する。

政党アンケート

政党アンケートとりまとめ結果

グリーン連合では、2015年6月5日の設立に先立ち、各政党に対して、国内各政党の環境政策の重点度合いや政策プロセスに対する環境NGOの参加に関する考え方を伺うことを目的として「政党アンケート」を行ないました。11政党に送付し、9つの政党から回答をいただきました

1.回答状況

<回答があった政党>
自由民主党、民主党、維新の党、公明党、日本共産党、次世代の党、社会民主党、生活の党と山本太郎となかまたち、日本を元気にする会

<回答がなかった政党>
太陽の党、新党改革

2.質問項目

①貴党の全体の政策の中で”環境政策“の優先度はどの程度ですか?他の政策と比較して優先度が高い(10)から環境政策を特に持っていない(0)のレベルでいずれかふさわしい数字に〇をつけてください。

②貴党の環境政策のうち、当面の重要事項は何でしょうか。重視しているものに〇を、特に重視しているものに◎をつけてください。

地球温暖化・気候変動/脱原発/循環型社会/容器包装リサイクル/生物多様性・生態系/海洋汚染/大気汚染/森林保全/化学物質対策/その他(具体的に        )

③日本は気候変動政策の遅れが指摘されていますが、COP21に日本はどう臨むべきとお考えですか。(自由回答)

④環境NGOの環境政策形成過程への参画についてどうお考えですか。(自由回答)

⑤環境分野で活動する市民団体の連合組織として、「日本市民環境団体連合会(仮称)」が設立されますが、この団体にどのようなことを期待されますか?また党として、どのような支援が可能か、お考えをお聞かせください。

3.アンケートの結果

こちらをご覧ください。

グリーン連合「政党アンケート」とりまとめ結果(PDF

*なお、アンケート依頼時点では「日本市民環境団体連合会(仮称)」としていますが、6月5日の設立総会をもって正式名称が「グリーン連合」となりました。この報告では、送付時点の内容をそのまま掲載しておきます。