第6次エネルギー基本計画(案)への意見
2021年10月1日
グリーン連合 共同代表 藤村コノヱ、中下裕子、杦本育生
幹事 松原弘直、桃井貴子、坂本有希
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再生可能エネルギー100%を目標に2050年カーボンニュートラルを目指すこと
2030年には原発ゼロ、石炭ゼロで再生可能エネルギー電源50%以上を目標とし、CO2(二酸化炭素)排出量も60%削減を目指す必要がある。さらに2050年には全エネルギー消費量に対して再生可能エネルギー100%社会を実現することで、カーボンニュートラルを目指す。欧州では、すでに再生可能電源の割合が平均40%に達しており、2030年には60%程度を目指している。さらに、再生可能エネルギー100%を目指す国もあり、日本でも再生可能エネルギー100%の目標を掲げ、明確なロードマップを策定する必要がある。
火力発電を2050年までに脱炭素化しようとする水素・アンモニアあるいはCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)などの技術は現実性に乏しく、コストも非常に高く、脱炭素化のソリューションとすべきではない。
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全ての原子力発電所を廃止し、脱炭素電源は再生可能エネルギーだけにすること
東京電力福島第一原子力発電所事故に踏まえれば原発のリスクは回避が困難で、損害賠償制度も現実には成立せず、社会的にも経済的にも安全性を確保することは不可能である。使用済核燃料や放射性廃棄物の処理の問題も解決は困難であり、2030年より早期の原発ゼロを前提とすべきである。
3.11以降、原発の発電電力量は一旦ゼロ(2014年度)となり、2020年度の発電電力量は4%未満で、東日本の原発は未だに稼働ゼロの状況にある。政府および原子力事業者は、福島第一原発事故から10年が経過した現在も、いまだに「安全神話」に陥ったままであり、国民の信頼が損なわれている中で、原発の再稼働など進めるべきではない。またすでに稼働している原発についても安全を再優先するためには停止するしかない。こうしたことを踏まえて、全ての原発の廃止措置を政府と原子力事業者が責任をもって、適切に進めるべきである。
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2030年までに石炭火力は全廃し、LNG火力も新規建設禁止とすること
気候危機を回避するためには、2020年以降の石炭火力の新設を禁止するとともに、既存の石炭火力を2030年までに段階的全廃(フェーズアウト)する必要がある。2030年に電源構成のうち石炭火力
を19%も残す政府案は、温室効果ガスの削減目標である2030年46~50%削減、2050年実質ゼロの実現にも水を差すものである。また、LNG(液化天然ガス)であっても新たに化石燃料の火力発電所を稼働することは気候を悪化させることにつながるため、禁止すべきである。
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省エネルギーを大原則とし、ライフスタイルの見直しやエネルギーシステムの根本的な改革に取り組むこと
脱炭素社会に向けては省エネを大原則とし、当面の2030年に向けて電力需要を3割以上削減し、再生可能エネルギーによる電化を進めながらエネルギー消費量全体を4割削減することを目指す必要がある。
そのためには、エネルギー消費の少ない健康で心豊かなライフスタイルへの転換、建築物の省エネ化、歩いて移動できる脱炭素型のまちづくりや公共交通インフラ整備など、これまでとは異なる暮らしや社会の構築が不可欠である。そしてそれらを促進するために、先端技術だけに頼るのではなく、既存の脱炭素型技術の活用と合わせて、私たちの価値観の転換を促す教育、省エネルギーを促進する研究、エネルギーシステムそのものの抜本的見直し、カーボンプライシングなど経済的政策の導入など、あらゆる手段を講じるべきである。そしてすべての暮らしと、それを支える社会経済活動の基盤である環境を主軸に置いた、持続可能なエネルギー政策とそのためのロードマップを明確に示すべきである
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民意を反映した市民参加の政策決定プロセスを制度として確立すること
環境・エネルギーに係る政策は、私たち市民の暮らしに直結する政策である。そのため、地球サミットで採択された「リオ宣言」(1992年6月)の第10原則には、「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。」旨明記されている。さらにこの原則を条約にした「オーフス条約」(日本は未批准)では、環境に関する情報へのアクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスへの権利が保証されるなど、市民参加の重要性は国際的にも認識されている。
しかし、日本では、エネルギー基本計画を審議する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員の多くが産業界寄りであり、エネルギーと表裏一体である気候変動が主要課題といっても過言ではない中、環境団体を代表する委員は加わっていない。このような政策決定プロセスでは、世界的な課題である気候変動問題の根本的な解決や脱炭素社会に向けた政策が議論されないまま、従来型のエネルギーありきの議論に終始してしまい、再び国際社会から強く批判される環境・エネルギー政策になりかねない。
気候変動やエネルギーに係る政策の影響をもろに受けるのも私たち市民だが、その政策決定過程への市民の参画やそのための情報アクセスが不十分な現況は、国際社会の一員である日本として恥ずべき実態であり、国際ルールにも反するものである。そうしたことから、早急に環境・エネルギー政策決定プロセスにおける市民参加を制度として導入すべきである。
以上