第六次環境基本計画案に対する意見「環境政策にもっと市民の意見の反映を!」

グリーン連合では、第六次環境基本計画案の意見募集(パブコメ)に対して以下の意見を公表し、提出します。

環境政策にもっと市民の意見の反映を!

グリーン連合
2024年4月9日

環境やエネルギーに係る政策は、私たち市民の暮らしに直結する政策です。そのため、1992年6月に開催された国連環境・開発会議(地球サミット)において全会一致で採択された「リオ宣言」の第10原則には、「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。」旨明記されています。

また、この原則を条約にした「オーフス条約」では、環境に関する情報へのアクセス、意思決定における市民参画、司法へのアクセスへの権利が保証されています。(残念ながら日本はいまだに締約国になっていません。)

にもかかわらず、わが国では、従来から環境やエネルギー分野の多くの政策が、政府と特定の専門家・業界関係者により決定されてきた経緯があることから、私たち市民団体は、偏った政策形成過程の改善と、真の市民参画の必要性について要望を重ねてきました。

しかし、わが国では「参加」が権利であるという認識が希薄なことから、この分野における政策形成過程への市民の関与はいまだ不十分な状況にあり、特に最近はその傾向に拍車がかかり、環境政策の停滞を招いています。

その一例として、市民参加の進むEUでは、温室効果ガスの域内排出を2040年までに1990年比で90%削減することを発表するなど、世界は脱炭素に向けた動きを加速しています。しかし、パリ協定と整合性のない日本政府の現在の削減目標は、今後も国際的批判を浴び続けるだけでなく、地方自治体や企業、市民社会に対して間違ったメッセージを送ることとなり、その取組を大幅に遅らせ、気候危機を止めることを不可能にします。これは正しい情報が提供されていない一例です。

また、電力自由化の中でも電力市場を寡占している大手電力会社が持つ既設の原発や石炭火力発電所を維持するために、国民が知らない間に、政府と関係者の間だけで議論が進み、気候変動に逆行するような様々なエネルギー政策が決定されてきています。これは適切な市民の参画が行われていない一例です。

気候変動や原発を含むエネルギー、化学物質やプラスチック問題などは、すべて私たち市民の暮らしと密接に関わる問題であり、政策の影響を直接受けるのも私たち市民です。また現場での異変をいち早く察知できるのも私たち市民です。

そうした現場からの情報をもとに政策形成過程に市民が参加することで、政策の信頼性は増し、提案が多様化することでより良い政策の選択の幅が広がるだけでなく、政策の普及・実施段階での協力も得やすくなり、実効性が高まることも期待できます。

にもかかわらず、現在議論が進められている第六次環境基本計画案の中でも「政策決定過程への国民参画とそのための政策コミュニケーション、その成果の可視化が必要」(p.46)とし、その際の情報手段については書かれているものの、「自主的・積極的な活動を」(p.46)ということで、政策形成過程への市民の参加の仕組みについては全く触れられていません。またこれまでの環境政策でその成果の可視化がされたことはほとんどない中で、また政策の成果が出るには長い時間がかかる中で、どう成果を可視化していくのか不明です。

このように、環境政策形成過程での市民参画やそのための情報アクセスが不十分である状況は、国際社会の一員である日本として恥ずべき実態であり、少なくとも先進国において確立されたルールにも反することから、早急の改善を強く求めるものであり、少なくとも、今回の環境基本計画では、その仕組みについて明記することを期待します。

【参考】

〇1992年6月にリオで開催された「国連環境・開発会議」(地球サミット)において全会一致で採択された「リオ宣言」の第10原則

『環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。国内レベルでは、各個人が、有害物質や地域社会における活動の情報を含め、公共機関が有している環境関連情報を適切に入手し、そして、意思決定過程に参加する機会を有しなくてはならない。各国は、情報を広く行き渡らせることにより、国民の啓発と参加を促進し、かつ奨励しなくてはならない。賠償、救済を含む手法及び行政手続きへの効果的なアクセスが与えられなければならない。』

〇「オーフス条約」(正式名称:環境問題における情報アクセス、意思決定への市民参加及び司法へのアクセスに関する条約」)の第1 目的

『現在及び将来の世代のすべての人々が、健康と福利に適した環境のもとで生きる権利の 保護に貢献するため、締約国はこの条約の規定にしたがって、環境に関する、情報への アクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスへの権利を保証する。』

【意見書】第6次エネルギー基本計画(案)への意見

第6次エネルギー基本計画(案)への意見

2021年10月1日

グリーン連合 共同代表 藤村コノヱ、中下裕子、杦本育生
幹事 松原弘直、桃井貴子、坂本有希

  • 再生可能エネルギー100%を目標に2050年カーボンニュートラルを目指すこと

 2030年には原発ゼロ、石炭ゼロで再生可能エネルギー電源50%以上を目標とし、CO2(二酸化炭素)排出量も60%削減を目指す必要がある。さらに2050年には全エネルギー消費量に対して再生可能エネルギー100%社会を実現することで、カーボンニュートラルを目指す。欧州では、すでに再生可能電源の割合が平均40%に達しており、2030年には60%程度を目指している。さらに、再生可能エネルギー100%を目指す国もあり、日本でも再生可能エネルギー100%の目標を掲げ、明確なロードマップを策定する必要がある。

 火力発電を2050年までに脱炭素化しようとする水素・アンモニアあるいはCCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)などの技術は現実性に乏しく、コストも非常に高く、脱炭素化のソリューションとすべきではない。

  • 全ての原子力発電所を廃止し、脱炭素電源は再生可能エネルギーだけにすること

 東京電力福島第一原子力発電所事故に踏まえれば原発のリスクは回避が困難で、損害賠償制度も現実には成立せず、社会的にも経済的にも安全性を確保することは不可能である。使用済核燃料や放射性廃棄物の処理の問題も解決は困難であり、2030年より早期の原発ゼロを前提とすべきである。

 3.11以降、原発の発電電力量は一旦ゼロ(2014年度)となり、2020年度の発電電力量は4%未満で、東日本の原発は未だに稼働ゼロの状況にある。政府および原子力事業者は、福島第一原発事故から10年が経過した現在も、いまだに「安全神話」に陥ったままであり、国民の信頼が損なわれている中で、原発の再稼働など進めるべきではない。またすでに稼働している原発についても安全を再優先するためには停止するしかない。こうしたことを踏まえて、全ての原発の廃止措置を政府と原子力事業者が責任をもって、適切に進めるべきである。

  • 2030年までに石炭火力は全廃し、LNG火力も新規建設禁止とすること

 気候危機を回避するためには、2020年以降の石炭火力の新設を禁止するとともに、既存の石炭火力を2030年までに段階的全廃(フェーズアウト)する必要がある。2030年に電源構成のうち石炭火力
を19%も残す政府案は、温室効果ガスの削減目標である2030年46~50%削減、2050年実質ゼロの実現にも水を差すものである。また、LNG(液化天然ガス)であっても新たに化石燃料の火力発電所を稼働することは気候を悪化させることにつながるため、禁止すべきである。

  • 省エネルギーを大原則とし、ライフスタイルの見直しやエネルギーシステムの根本的な改革に取り組むこと

 脱炭素社会に向けては省エネを大原則とし、当面の2030年に向けて電力需要を3割以上削減し、再生可能エネルギーによる電化を進めながらエネルギー消費量全体を4割削減することを目指す必要がある。

 そのためには、エネルギー消費の少ない健康で心豊かなライフスタイルへの転換、建築物の省エネ化、歩いて移動できる脱炭素型のまちづくりや公共交通インフラ整備など、これまでとは異なる暮らしや社会の構築が不可欠である。そしてそれらを促進するために、先端技術だけに頼るのではなく、既存の脱炭素型技術の活用と合わせて、私たちの価値観の転換を促す教育、省エネルギーを促進する研究、エネルギーシステムそのものの抜本的見直し、カーボンプライシングなど経済的政策の導入など、あらゆる手段を講じるべきである。そしてすべての暮らしと、それを支える社会経済活動の基盤である環境を主軸に置いた、持続可能なエネルギー政策とそのためのロードマップを明確に示すべきである

  • 民意を反映した市民参加の政策決定プロセスを制度として確立すること

 環境・エネルギーに係る政策は、私たち市民の暮らしに直結する政策である。そのため、地球サミットで採択された「リオ宣言」(1992年6月)の第10原則には、「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。」旨明記されている。さらにこの原則を条約にした「オーフス条約」(日本は未批准)では、環境に関する情報へのアクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスへの権利が保証されるなど、市民参加の重要性は国際的にも認識されている。

 しかし、日本では、エネルギー基本計画を審議する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員の多くが産業界寄りであり、エネルギーと表裏一体である気候変動が主要課題といっても過言ではない中、環境団体を代表する委員は加わっていない。このような政策決定プロセスでは、世界的な課題である気候変動問題の根本的な解決や脱炭素社会に向けた政策が議論されないまま、従来型のエネルギーありきの議論に終始してしまい、再び国際社会から強く批判される環境・エネルギー政策になりかねない。

 気候変動やエネルギーに係る政策の影響をもろに受けるのも私たち市民だが、その政策決定過程への市民の参画やそのための情報アクセスが不十分な現況は、国際社会の一員である日本として恥ずべき実態であり、国際ルールにも反するものである。そうしたことから、早急に環境・エネルギー政策決定プロセスにおける市民参加を制度として導入すべきである。

以上

【開催報告(8/21)】グリーン連合オンライン勉強会~第6次エネルギー基本計画案の問題点

グリーン連合オンライン勉強会~第6次エネルギー基本計画案の問題点

※プレゼン資料と録画を掲載しています。

世界中で気候危機が叫ばれ、気象災害が頻発する中で、世界各国、都市や企業が脱炭素・カーボンニュートラルを目指して動き出しています。日本政府も2050年カーボンニュートラルを宣言し、2030年温室効果ガス46%削減(2013年比)を目指す中、3年に一度改正される国の第6次エネルギー基本計画の案が示されました。しかし、その内容には本質的な気候変動対策や再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、石炭火力や原発への依存など多くの問題があります。そこで、この新たなエネルギー基本計画案の内容を共有し、その問題点についてみなさんと共に議論しました。多くの方にご参加頂き、ありがとうございました。

日時:2021年8月21日(土)16:00-17:00
会場:オンライン(Zoomウェビナー)
主催:グリーン連合
参加費:無料

プログラム:
16:00 開会挨拶
情報提供:「第6次エネルギー基本計画案の問題点」 [資料]
環境エネルギー政策研究所(ISEP)理事・主席研究員 松原弘直
コメント:「気候危機とエネルギー基本計画」
気候ネットワーク東京事務所長 桃井貴子 [資料]
質疑応答&ディスカッション
17:00 閉会

【意見書】福島第一原発ALPS等処理水(汚染水)の海洋放出に強く反対します

意見書

2021年7月1日
グリーン連合
共同代表 藤村コノヱ、中下裕子、杦本育生

菅義偉政権は、4月13日、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」「地元関係者の理解を得ながら対策を実施することとし、海洋への安易な放出は行わない」旨のこれまでの地元関係者と東京電力、経産省間の約束文書を反故にして、福島第一原発で発生しているALPS等処理水(以下、「汚染水」という)の海洋放出を閣議決定しました。これに対し、福島県漁協連をはじめ、同農協中央会、同森林組合連、同生協連、地産地消ふくしまネットの5団体は、4月30日、意思決定プロセスへの遺憾の意を表するとともに、海洋放出に反対する旨の共同声明を発表しました。また、原子力資料情報室、原子力市民委員会、FoEジャパン、グリーンピースジャパンなどの市民団体からも反対の意見が発表され、さらに韓国、中国など周辺の国々からも反対の声が上がっています。

 日本の環境団体の連合組織であるグリーン連合も、上記の非民主的な意思決定プロセスに加え、以下の理由により、汚染水の海洋放出に強く反対します。

1. 汚染水にはトリチウムの他にも有害な放射性物質が基準を超えて含まれていること

 政府は、トリチウムの安全性を強調している。しかし、汚染水には、通常の原発からの排水と異なり、トリチウムのみならず、ヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90などの放射性物質が基準を超えて残存していることが明らかになっている。タンクに貯められている水の約7割で、トリチウム以外の62の放射性核種の濃度が全体として排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍になっている。政府は基準に適合するように2次処理をした上で希釈して放出するとしているが、処理・希釈しても62核種が排出されることは変わらず、これにより、海洋を汚染し、食物連鎖を介して人の健康や生態系に悪影響を及ぼす恐れがあることは否定できない。

 また、トリチウムについても、安全性について懸念を表する専門家もおり、決して安全性が保証されている訳ではない。しかも、希釈しても排出総量(約2000兆ベクレル)は変わらず、年間22兆ベクレルの放出量は事故前の放出量(年間1.5~2.5兆ベクレル)の約10倍である。それが数十年にわたって続けば海洋生態系に及ぼす影響は無視できる量ではない。

2. 海洋放出の前に汚染水を止水すべきであること

 汚染水が増え続けている原因は、メルトダウンした燃料が落下した原子炉建屋地下への地下水流入が続いていることにある。この点については、2013年当時、山側に遮水板を設置する案が強力に主張されたにもかかわらず、新技術なら国費345億円が使えるという理由で凍土壁案を採用、しかし結果的には完全な遮水はできず、汚染水が増え続けるという現状を招いており、明らかに政策の失敗と言わざるを得ない。

 そのことを放置したまま、他の止水策を講じることなく、海洋放出を行うことは、到底、関係者や国民、さらには国際世論を納得させることができない。速やかに、失策の経過を検証するとともに、遮水壁を設置することにより汚染水の更なる発生を防止し、海洋放出を回避すべきである。

3. 人類共有の財産である海洋の汚染を防止し、豊かな海洋と海洋資源を守ることは国際社会における日本の責任

 近年、海洋環境の保全は、国際環境問題における重要なテーマのひとつとなっており、ロンドン条約、国連海洋法、さらにはSDGsの目標14にも、そのことが明記されている。

 福島第一原発事故の責任は国・東電にあり、それによる汚染問題は汚染国の国内において処理すべきであって、海洋放出により世界中の人々の共有財産である「豊かな海」を汚すことは許されない。

 以上のとおり、国は、海洋放出の方針をすみやかに撤回し、まず汚染水を止水したうえで、国内管理策に関して、地域住民を含む様々なステークホルダー参加の下で決定すべきです。

以上

【意見書】「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」に対する意見書の提出について

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」に対する意見書の提出について

意見書(PDF)

グリーン連合
共同代表 杦 本 育 生
同    藤 村 コノヱ
同    中 下 裕 子

2021(令和3)年3月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」(以下「本法案」という)が内閣から提出され、今国会での成立が目指されている。

プラスチック廃棄物問題については、海洋プラスチック汚染の深刻化により国際的課題として取組みがなされ、2019年6月のG20大阪ブルー・オーシャン・ビジョンでは「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減する」との目標が明記された。

一方、2020年10月には日本でも「2050年カーボンニュートラル(脱炭素)宣言」がなされたことから、石油由来のプラスチックについても、脱炭素の観点からの取組みが求められる。

このような状況において、プラスチック問題の解決については、単に廃棄物管理の強化にとどまらず、「2050年カーボンニュートラル」への貢献も含め、プラスチックの大幅な総量削減と3Rの優先順位に従った循環利用の徹底を通じて、サーキュラー・エコノミー社会を早期に構築していくことが求められており、そのためには、大胆な施策を段階的・計画的、かつ着実に実施していく必要がある。

しかしながら、本法案では、2050年までの中間の年次における削減の数値目標が明記されておらず、規制的措置やカーボンプライシング等の経済的手法も含まれていない単なる促進法にとどまっており、極めて不十分である。

「グリーン連合」は、日本が2019年G20議長国として率先してサーキュラー・エコノミー社会を実現するために、本法案に下記内容を盛り込むことを提言する。

① 2050年石油由来のバージンプラスチックの製造ゼロを目指して、市民参加の下に、バックキャスティング手法により目標年次を定めてプラスチックの総量削減に取り組むこと。

② 事業者の自主的取組みだけでなく、生産者よる回収義務をはじめとする生産者の責任の強化、有害化学物質管理などの規制的手法や、カーボンプライシングの導入などの効果的な措置を講じること。

③ リデュース・リユース・リサイクル・熱回収の比率についての年次目標を、3Rの優先順位に従った形で明確化すること。

④ 2030年使い捨てプラスチックゼロを目標として掲げ、その実現のために、拡大生産者責任を徹底し、製造や提供を禁止するなどして計画的に削減を進めること。

⑤ マイクロカプセルを含めてマイクロプラスチックの意図的製造を禁止するとともに、漁具の回収を義務化するなど効果的な流出防止策を講じること。

以上

【声明】環境・エネルギー政策にもっと市民の意見の反映を

環境・エネルギー政策にもっと市民の意見の反映を

2020年10月23日
「グリーン連合」共同代表
藤村コノヱ、杦本育生、中下裕子

 環境・エネルギーに係る政策は、私たち市民の暮らしに直結する政策です。そのため、1992年6月に開催された国連環境・開発会議(地球サミット)において全会一致で採択された「リオ宣言」の第10原則には、「環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。」旨明記されています。

また、この原則を条約にした「オーフス条約」では、環境に関する情報へのアクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスへの権利が保証されています。(残念ながら日本は締約国になっていません。)

にもかかわらず、わが国では、従来から環境・エネルギー分野の多くの政策が、政府と特定の専門家・業界関係者により決定されてきた経緯があることから、私たち市民団体は、偏った政策形成過程の改善と、真の市民参画の必要性について要望を重ねてきました。

しかし、この分野における政策決定過程への市民の関与はいまだ不十分な状況にあり、特に最近はその傾向に拍車がかかっているようです。

例えば、福島原発事故に伴う汚染水処理について、経済産業省「多核種除去設備等処理水の取扱に関する小委員会」がまとめた報告書(今年2月)で、海洋放出案が「現実的な選択肢である」と結論づけて以来、政府は、直接、一般市民を対象とした説明会や公聴会は行わず、政府側が選んだ「関係団体」からのみ、きわめて形式的な聴き取りを行うだけです。

また、電力自由化の中でも電力市場を寡占している大手電力会社が持つ既設の原発や石炭火力発電所を維持するために、国民から新たに費用を取り立てようとする「容量市場」を始め、「非化石価値取引市場」など新たな電力市場の問題が浮上しています。この他にも電力自由化の中で国民が知らない間に、電気料金の一部である託送料金の中に福島第一原発事故の賠償負担金や不足している原発の廃炉円滑化負担金などが含まれるなど、政府と関係者の間だけで議論が進み、様々なエネルギー政策が決定されてきています。

さらに現在議論が進められている第6次エネルギー基本計画についても、議論の中心となる総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員の多くが産業界寄りであり、エネルギーと表裏一体である気候変動が主要課題といっても過言ではない中、環境団体を代表する委員は加わっていません。これでは世界的な課題である気候変動問題の根本的な解決や脱炭素社会に向けた政策ではなく、従来型のエネルギーありきの議論に終始してしまい、再び国際社会から強く批判される環境・エネルギー政策になりかねません。

気候変動やエネルギーなどは、すべて私たちの暮らしと密接に関わる問題であり、政策の影響をもろに受けるのも私たち市民です。

にもかかわらず、その政策決定過程への市民の参画やそのための情報アクセスが不十分である状況は、国際社会の一員である日本として恥ずべき実態であり、少なくとも先進国においては確立されたルールにも反することから、早急の改善を強く求めるものです。

【参考】

〇1992年6月にリオで開催された「国連環境・開発会議」(地球サミット)において全会一致で採択された「リオ宣言」の第10原則

『環境問題は、それぞれのレベルで、関心のあるすべての市民が参加することにより最も適切に扱われる。国内レベルでは、各個人が、有害物質や地域社会における活動の情報を含め、公共機関が有している環境関連情報を適切に入手し、そして、意思決定過程に参加する機会を有しなくてはならない。各国は、情報を広く行き渡らせることにより、国民の啓発と参加を促進し、かつ奨励しなくてはならない。賠償、救済を含む手法及び行政手続きへの効果的なアクセスが与えられなければならない。』

〇「オーフス条約」(正式名称:環境問題における情報アクセス、意思決定への市民参加及び司法へのアクセスに関する条約」)の第1 目的

『現在及び将来の世代のすべての人々が、健康と福利に適した環境のもとで生きる権利の 保護に貢献するため、締約国はこの条約の規定にしたがって、環境に関する、情報への アクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスへの権利を保証する。』

要望書「炭素税は、国民的議論を踏まえて、早期に導入を」を提出しました(9/19)

2018年9月19日(水)の午後、「炭素税は、国民的議論を踏まえて、早期に導入を」というグリーン連合からの要望書を、中川雅治環境大臣あてに提出。大臣はご不在でしたので、替わって、とかしきなおみ環境副大臣が受け取ってくださいました。(森下地球環境局長、角倉地球環境局総務課長も同席。グリーン連合からは7名の幹事が参加)

要望書について簡単に説明した後、とかしき副大臣からも、炭素税の重要性については十分認識しており環境省としても全力を尽くす旨、政治からの明確なメッセージを出す必要がある旨、そのためにも、グリーン連合のこの要望書を様々な議員や経産省はじめ、あちこちに出してほしい旨の要請もありました。

とても快活で積極的な副大臣で、私たちを「応援団」として、しっかり認識して下さっていたようです。

副大臣との面談は15分の予定をオーバーしての面談でしたが、その後の局長・課長との面談も含め、環境省としてのやる気も十分に伺え、グリーン連合としてもパリ協定の実現に向け、連携して、頑張っていこうということで、要望書提出のための面談は終了しました。

面談時の、とかしきなおみ環境副大臣の主なコメント:

  • 今年の日本の災害は本当にひどかった。国際会議に行くと必ず海外の人からまず最初にお見舞いの言葉をかけられる。
  • パリ協定というのは最低限やっていかなければならない。本当はそれ以上やらないといけない。
  • このままでは地球の将来が危ない。産業界にもそれを理解してもらう必要がある。地球環境が維持できなければビジネスだってできない。
  • 環境政策に取り組むことは産業にとっても非常に重要だ。
  • カーボンプライシングについては政治の意思を示すことが必要だ。総理からもメッセージを出してもらうという話が出ている。国として発信する必要がある。

【エネルギー基本計画緊急署名】「原発ゼロで日本の未来を切り拓く」スタートしました!

エネルギー基本計画緊急署名
「原発ゼロで日本の未来を切り拓く」スタートしました!

eシフト、グリーン連合、CAN Japanは、2017年度から始まったエネルギー基本計画の見直しに対し市民の声を可視化して届けるべく、緊急署名「原発ゼロで日本の未来を切り拓く」をスタートしました。

1月末と3月末に集約し、内閣総理大臣と経済産業大臣に届けます。

賛同団体も募集しています(下記)。ぜひ各地で声を広げていきましょう!

オンライン署名、もしくは紙の署名でご参加ください。

◆いますぐ署名する(Change.orgへ(リンク))

◆署名本文(PDFのダウンロード(署名用紙))

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エネルギー基本計画緊急署名

原発ゼロで日本の未来を切り拓く

内閣総理大臣 安倍晋三様
経済産業大臣 世耕弘成様

政府は2017年、「エネルギー基本計画」の見直しを始めました。しかし現在の方向性は、原発維持、石炭火力推進であり、省エネと再エネに消極的というものです。実際に、「可能な限り低減していく」はずの原発の再稼働や延長運転が次々と進められ、石炭火力発電所の新設計画は容認されています。原発の新増設の議論さえあります。一方、福島原発事故は収束せず、被害者の苦難が続いています。

今回の基本計画見直しは今後3年間だけでなく、2030年、2050年のエネルギー政策にまで影響を及ぼします。新しい基本計画は脱原発、気候変動防止で、世界の再エネ100%への大きい流れに合流し、日本の未来を切り開くものにしなければなりません。それは、中央集権・地域独占の体制から、地域・自治体などが主体性を持つ地域分散型エネルギー社会への転換でもあります。

私たちは、エネルギー基本計画見直しにおいて以下を要望します。また、見直しの過程では、日本全国の各地域での討論会等を行って、市民や自治体の意見を反映させるようお願いいたします。

要望事項

1 原発再稼働を止め、早期原発ゼロを明記すること。核燃料サイクルを断念すること。

2 原発と石炭火力発電をベースロード電源とする考え方をやめ、再エネを優先電源とすること。

3 原発の費用を託送料金に上乗せする計画をやめ、送配電網の公有化を進めること。

4 石炭火力発電所の新増設をストップすること。

5 炭素税など炭素の価格付けを政策に入れ、パリ協定を推進すること。

6 エネルギー基本計画見直しプロセスにおいて市民参加の機会を確保し、意見を反映すること。

呼びかけ: eシフト、グリーン連合、CAN-Japan 

締め切り: 20181月末、3月末 

問合せ:eシフト事務局(FoE Japan03-6909-5983

送付先(関東): 気候ネットワーク東京事務所 〒102-0082 東京都千代田区一番町9-7 一番町村上ビル6F
(関西): 地球救出アクション97  〒580-0003松原市一津屋4-9-6 稲岡美奈子

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◆賛同団体募集! こちらからご登録ください(リンク

◆参考リーフレット「どうする?これからの日本のエネルギー」(リンク
署名を呼びかけるさいに、ぜひ一緒に活用ください。
申し込みフォームへのリンク

休眠預金に関する要望書を内閣府に提出!

 グリーン連合は、活動の目的のひとつとして「市民環境団体共通の組織基盤強化のための提言及び実現に向けての働きかけ」中でも財政的な基盤の強化をあげています。日本は、欧米諸国だけでなくアジアの中でも、環境NPO/NGOへの国からの財政的な支援は乏しいものが状況にあります。グリーン連合は、税の国民への還元の一環として、国や地方自治体では難しい、公共的利益を実現していく環境NPO/NGOの活動を財政的支援するのは、民主主義国として当然のことであり、地球環境基金以外の多岐にわたる方策が必要と考えています。

 休眠預金活用とは、金融機関で10年以上放置された預貯金を民間の公益活動に充てるもので、その法的基盤である「休眠預金活用法」が201612月に成立しています。これまで、銀行などで眠る年700億円程度のお金はこれまで金融機関の収入になっていましたが、NPO法人などの民間公益団体に助成したり融資したりして活用するものです。2019年秋には実際の助成や融資が始まる予定です

 休眠預金は、国のお金ではなく国民の預貯金で放置されたものですので、本来求めている国の財政的支援とは異なりますが、多くの環境NPO/NGOが、財政的基盤が脆弱であるがために、活動が限定されている現状を考えると、休眠預金活用に関心を持たざるを得ません。

 現在、その実施方針とスキームづくりが内閣府によって進められていますが、いくつかの問題点が現われています。①検討過程の透明性や市民参加度が低い②対象となる活動が限定的で、環境活動は直接の対象になっていない。実際的には「子ども及び若者の支援に係る活動」「地域社会における活力の低下その他の社会的困難な状況に直面している地域の支援に係る活動」に結び付けた環境活動しか対象にならない恐れが大きい③ソーシャルビジネス等の事業性のある活動が中心に考えられており、公益性が高いが事業性の低い社会・政策提案(アドボカシー)活動が対象にならない恐れが大きい④「資金分配団体」としては、地域のコミュニティ財団等が想定されているようで、環境活動に理解や実績のある団体が資金分配団体として指定されるかどうか不明。

 グリーン連合では、このような状況を変えるために、内閣府への要望書の提出、公聴会での発言、国会議員への働きかけ、環境省等との意見と情報の交換などを行っています。皆さんも、ぜひこの課題に関心を持って、今後の行動等に協力をお願いします。

グリーン連合共同代表幹事 杦本育生

中央環境審議会が検討を開始した「長期低炭素ビジョン」に対する提案

グリーン連合は、環境省の中央環境審議会が検討を開始した「長期低炭素ビジョン」に対して以下の提案を2016年9月30日に環境省に対して提出しました。

グリーン連合「長期低炭素ビジョン」に対する提案(PDF)

中央環境審議会が検討を開始した「長期低炭素ビジョン」に対する提案

2016年9月30日
「グリーン連合」共同代表
藤村コノエ、杦本育生、中下裕子

1.私たちの基本的認識 

(1) 人類社会が気候変動問題に本格的に取り組み、国連気候変動枠組条約を締結して23年。そして昨年末に190を超す国の代表の合意で採択された「パリ協定」は、準備開始から少なくとも6年という長い時間をかけ、IPCCに集った科学者や専門家の気候変動に関する最新最良の知見を踏まえ、厳しい交渉を経て、画期的な内容で合意された。このパリ協定が発効し確実に実施されれば、悪化の一途を辿ってきた気候変動の克服に希望の兆しが見えてくると、私たちは、この歴史的合意を歓迎している。

(2) 数ある合意点のうち、「長期低炭素ビジョン」を検討するにあたって、特に重要と考える点は、①産業革命前からの世界の平均気温の上昇を、2℃を充分に下回るレベルに抑え、1.5℃未満に収めるよう努力することが合意された点、②世界全体でできるだけ早い時期に温室効果ガス排出量の増加を止め、今世紀後半には排出量と吸収量とを均衡させ「実質ゼロ」を目指すとした点、である。なぜなら、パリ協定に示されたメッセージは、産業革命以降、エネルギー源として化石燃料を大量に消費し物質的に豊かで便利な経済社会を築いてきた過去2世紀余に及ぶ都市化・工業化された文明を大転換し、低エネルギー消費社会を実現するとともに、温室効果ガスをほとんど排出しない持続可能な再生可能エネルギーへとエネルギー源をシフトすること、すなわち、「脱炭素」社会の実現に社会が大きく舵を切ることを意味するからである。

(3) 日本がパリ協定に盛り込まれた画期的な内容を確実に実施し、その実現に着実に貢献するには、過去25年に及ぶ気候変動(地球温暖化)に係る従来の体制や政策を根本から見直す必要がある。なぜなら、これまでも、企業、市民も含め政府や自治体は数々の地球温暖化対策を講じてきたが、これまでの原発への依存や再生可能エネルギー導入の遅れから、結果的に温室効果ガスの排出総量は、年により多少の増減はあるものの、日本として基準年とすべき1990年レベルから低減しておらず、むしろ増加している(2014年度は7%増だが、前年比では原発稼働ゼロでも3%減)。COP21に向けて国連に提出した約束草案では、2030年度に2013年比26%削減(1990年度比で18%削減)というとても不十分な削減目標になっている。さらにこの不十分な削減目標の達成さえ危うくする石炭火力発電所の新規導入が電力自由化の中で進められようとしている。この点で日本は他の先進国と比べて地球温暖化政策の面で恥ずべき状況にあり、気候変動の時代にあって、政治・経済・社会を含む日本社会全体としての変革への取組みの立ち遅れを露呈するものと私たちは考えている。

(4) これまでの日本政府の気候変動に対する地球温暖化政策は、国民や企業の自主的な行動を促進する「対策」や技術の革新等が中心であった。しかし、こうした政策では、パリ協定が求める社会の実現は到底不可能であり、明確な中長期的目標やロードマップを伴った産業構造の転換、グリーン経済への移行といった経済システムの見直し、脱原発を前提とした脱化石エネルギー社会の構築、都市計画を含む社会システムそのものの見直しが不可避である。また、気候変動の時代を乗り越え、希望ある人類社会を築いていく上で何が最も重要かといった価値の転換やあらゆる層での持続可能な社会像の形成、それを促す学校教育や社会教育を立て直すことも不可欠である。さらに、これまではエネルギーや環境問題に積極的に関与してこなかった層も含む社会の全てのステークホルダーの参加が必要であると私たちは考えている。

(5) さらに昨年9月の国連サミットにおいて、貧困、飢餓、健康、教育、生産・消費などの17事項を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、「持続可能な開発目標(SDGs)」が決定された。この国際的な目標は日本にとっても極めて重要な方向性を包含しており、長期的な気候変動に対応する政策を策定する場合にも、これら目標の内容も十分に斟酌する必要があると私たちは考えている。

2.長期低炭素ビジョンの実現において不可欠な要素 

(1) 気候変動への対応の中で温室効果ガスの削減対策については、これまでも環境NPO/NGOを含む国内外の組織や研究者・有識者から様々な提案がなされて、それらが現実に効果を上げている国や地域も増えてきている。しかし、我が国では、主としてエネルギー多消費型の産業界の意向を強く反映したことにより、最も効果的な対策と考えられる環境税や排出量取引など炭素への価格付(カーボンプライシング)や総量排出規制が、東京都などで部分的に実施されているものの、ほとんど実施されていない。

しかし、先進国であり温室効果ガス削減の技術力に大きなポテンシャルを有する日本の責任から見ても、また、我が国の社会・経済全体の中長期的な健全な発展から考えても、カーボンプライシングや総量排出規制など着実に効果のある温室効果ガスの削減策を各部門で実施すべきである。いまこそ経済・社会の発展と温室効果ガスの排出量のデカップリングを実現する包括的な政策が求められる。

(2) 特に、長期目標及び気候変動政策と表裏一体である「エネルギー基本計画」や「2030年の電源構成」の見直しが急務である。

COP21での「パリ協定」合意前に、経産省が2030年度のエネルギー需要やエネルギーミックスを決定し、それに整合する形で、政府は温室効果ガスの削減目標(2030年13年比26%削減)を約束草案として設定したが、「パリ協定」合意後の本年5月に決定された「地球温暖化対策計画」においても、基本的に合意前と同じレベルの対策に留まっている。

気候変動に伴う世界での異常気象の激化のスピード及びその規模と、「パリ協定」に明記された「今世紀後半には実質ゼロを目指す」責務を考えると、「2050年80%削減」は最低でも達成すべき長期目標として掲げ、そこに向かう経路として中期根目標も速やかに見直し、それに沿ったエネルギーに関する中長期的な目標を設定し、実現するロードマップを策定すべきである。

具体的には、温室効果ガスの削減目標としては、2030年度に1990年度比で少なくとも40%~50%削減、2050年に1990年比80%削減とし、その後の「排出ゼロ」への道筋を描くべきである。また石炭火力は既存の発電所を廃炉にする道筋を作り、現在進められている新規建設計画を止めるべきである。そうしなければ2050年80%削減の達成は極めて困難である。

エネルギー需給の目標の設定については、2030年度には原発ゼロを前提として、長期的には再生可能エネルギー100%の社会を目指し、短期的には徹底した省エネに加え、そこまでのつなぎとしてガスコンバインサイクルの火力発電所などCO2排出量の少ない電源を活用し、2030年40~50%のCO2削減と再生可能エネルギー50%以上を目指すべきである。さらに全ての部門で最終エネルギー需要を基準とした2020年、2030年、2040年、2050年のエネルギー供給(エネルギーミックス)の目標を設定し、エネルギー需給のロードマップを策定すべきである。

(3) さらに、私たちは、中長期的な観点から我が国の気候変動政策を実施するにあたり、当面の間、次の要素が不可欠であると考える。

気候変動の重大な脅威は差し迫っている。気候変動政策の検討と実施には、時間的猶予がほとんどないことを想起していただきたい。

①経済的手法として

・総量排出規制を含む排出量取引制度(キャップ&トレードC&T)の導入
※既にC&Tは世界で4兆円規模にまで拡大

・現行の地球温暖化対策税の大幅強化ないしは有効な炭素税(仮称)の新規創設  ※税収は社会的課題の解決(特に奨学金への活用など次世代の負担軽減策への活用等)や、率先して脱炭素化に取り組む企業の減税措置などに活用

・企業の環境投資を促進するグリーンファンドの創設や環境金融の支援

・再生可能エネルギーによる発電に対する固定価格買取(FIT)制度の着実な継続と適切な改善(調達価格等の価格・区分設定)

・電力システム改革における再生可能エネルギー導入重視(優先接続、優先給電などの実現)および発送電分離・電力市場の拡充

・再生可能エネルギー熱供給の支援(供給インフラ整備、環境税、固定価格買取制度など)

・電気、ガス、燃料など消費エネルギーのグリーン化(省エネ、再生可能エネルギー比率向上など)促進(100%再生可能エネルギーを目指す)

②規制的手法として

・大気汚染防止法の改正ないしは温室効果ガス排出規制法の導入により、火力発電所、製鉄所等の固定発生源のみならず、自動車、船舶、航空機等の移動発生源からのCO2の排出を規制するとともに、CO2以外の温室効果ガスの規制を導入する
※カリフォルニア州大気資源局は2018年モデルからHVをZEVから外すことを決定

・建築物に対する省エネ法(省エネ基準)、化石燃料に対する省エネ法(エネルギー効率)およびエネルギー利用高度化法等の強化と拡充(再生可能エネルギーへの転換、熱電併給システムの導入促進など)

③森林管理・都市環境緑化の促進

・環境税や森林環境税を活用した、地域の森林管理および資源活用、CO2の吸収源対策、生物多様性の確保などに活用

④自治体・都市政策

・自治体の地域政策における気候変動政策およびエネルギー政策の基本計画(マスタープラン)策定

・まちづくりにおける都市のコンパクト化と地域の資源・エネルギー循環を考慮したゾーニングの実施

・都市内交通のグリーン化するために、都市内交通をLRT、自転車、EVのバス等に転換するなど地域の状況に応じた都市内グリーン公共交通システムの構築
※高齢化、過疎化対策との連携

⑤市民社会の育成・強化

・持続可能な社会構築に向けた環境教育の充実(公平性や経済・社会的視点強化)

・次世代を担う青少年の環境問題への活動を促し支援する仕組みづくり

・市民の取組みを広げる環境NPO/NGO等の育成・支援の拡充
※①炭素税等の活用

⑥情報公開の強化

・インターネット・ソーシャルメディアやマスメディアでの情報公開の強化

・地方公共団体、NPO、業界団体等を通じて、広報、シンポジウム、ワークショップ等のあらゆる機会を活用して、気候変動やエネルギーに関する最新の情報をわかりやすく提供する

⑦国際協力の強化

・「高効率石炭火力発電」などの化石燃料依存の技術ではなく、また原発など人類に大きなツケを残す技術ではなく、脱炭素社会構築に向けた日本の有する技術や情報を、途上国を含む国際社会に提供するとともに、国際社会が有する効果的な経験等を我が国も共有しながら、国際社会全体の気候変動への対応力を向上するよう貢献する

3.長期低炭素ビジョンの実現に実質的な市民参加を 

(1) 長期低炭素ビジョンを実現する脱炭素社会に向けては、その実現のための政策形成および実施プロセスにおいて、国や地方自治体などの公共セクターや企業などの民間セクターだけではなく、様々な私たちNPO/NGOも含めた、実質的な市民の参加が不可欠である。しかし、現状では、政策形成プロセスにおいても例えば、中央環境審議会とその下にある部会、委員会等への市民参加は限定されている。そのことが、オーフス条約等の下で市民参加を進め実効性ある環境政策の形成と実施を進めている欧州などと比較して、結果的にわが国の環境政策の停滞や後退を招いているように思われる。

(2) こうした偏った政策形成プロセスでは、国民各層からの意見を広く聞くという審議会などでの政策決定の趣旨に反するとともに、本来あるべき社会や環境に対する公平・公正な判断は期待できず、効果的な脱炭素社会に向けた長期ビジョン・戦略の策定はもとより実施段階においても国民各層の協力は得にくいものと考えられる。

(3) 今後、長期低炭素ビジョンの実現に係る政策形成プロセスにおいては、公平・公正の観点、政策の実効性の観点、さらに市民社会育成の観点から、環境NPO/NGOの参加枠を定めるなど、各課題に強い関心と専門性を有する市民セクターの参加を強く要望する。また、パブリックコメントやヒアリングにとどまらない、NPO/NGOをはじめとする国民各層や自治体からの意見を聴く機会を幅広く丁寧に確保すべきである。そうすることで、真に有効な環境政策の形成と実施が図れると私たちは確信する。

(以上)