パリ協定採択を受けて声明を発表しました

声 明  気候変動時代を乗り越えるため、「脱炭素化」に向けて日本社会の大転換を!!                    ~「パリ協定」の採択を受けて~ 

1.去る 12 月 12 日夜(現地時間)、パリで開催された COP21 は、すべての参加国の合意に より、法的拘束力をもつ「パリ協定」とそれに付随する「決定文書」を採択して閉幕した。

国連気候変動枠組条約を締結して 23 年。その下での京都議定書から 18 年。そして今回 のパリ協定に向けての本格的準備開始から少なくとも 6 年という長い時間をかけ、IPCC に集った科学者や専門家の気候変動に関する最新最良の知見を踏まえ、厳しい交渉を経て、 パリ協定は大方の予想を超える画期的な内容で合意された。

このパリ協定が発効し確実に実施されれば、悪化の一途を辿ってきた気候変動の克服に 希望の兆しが見えてくると、私たち環境 NPO/NGO もこの歴史的合意を歓迎している。

 

2.数ある合意点のうち、私たち環境 NPO/NGO にとって特に重要と考える点は、

①産業革命前からの世界の平均気温の上昇を、2℃を充分に下回るレベルに抑え、そして 1.5℃未満に収めるよう努力する長期目標が設定された点、

②そのため、途上国を含むすべての国は 2030 年までの温室効果ガスの削減目標を自ら設 定するとともに、その達成のための国内対策を国連に提出し5年ごとにその見直しを義 務付けられた点、

③世界全体でできるだけ早い時期に温室効果ガス排出量の増加を止め、今世紀後半には排 出量と吸収量とを均衡させ「実質ゼロ」を目指すとした点、

④これらが確実に達成されるよう世界全体で気候変動対策の進捗状況を 2023 年から 5 年 ごとに点検・評価する点 である。

 

3.今回のパリ協定に示されたメッセージは、産業革命以降、エネルギー源として化石燃料 を大量に消費し物質的に豊かで便利な経済社会を築いてきた過去2世紀余に及ぶ都市・工 業文明を大転換し、低エネルギー消費社会の実現を一層推進するとともに、温室効果ガス を排出しない再生可能エネルギーへとエネルギー源をシフトすること、すなわち、「脱炭素」 社会の実現に社会が大きく舵を切ることを意味する。

言うまでもなく、これは国内的にも国際的にも数々の困難を伴う大仕事である。

しかし、 昨今の気候激変のスピードを考えると、パリ協定が明示するように、「今世紀の後半」には 温室効果ガスの実質ゼロ化に向けて社会のあらゆる体制を速やかに整えなければならない。

 

4.日本がパリ協定に盛り込まれた目標と措置を確実に達成するには、過去 25 年に及ぶ従 来の体制や対策を根本から見直す必要がある。

なぜなら、これまでも企業、市民も含め政 府や自治体は数々の対策を講じてきたが、結果的に温室効果ガスの排出総量は、年により 多少の増減はあるものの、日本としては基準年の 1990 年レベルから低減しておらず、む しろ増加している。

さらに中長期的な気候変動対策に逆行する石炭火力発電所の新規導入 を進めようとしており、この点で日本は他の先進国と比べて恥ずべき状況にあり、気候変 動時代にあって、政治・経済を含む日本社会全体としての取組みの立ち遅れを露呈するも のである。

 

5.今年の夏に安倍政権が設定し、国際公約となった「2030 年に 13 年比で 26%削減」とい う目標は、1990 年比にすると 18%の削減にとどまり、他の先進国に比しても不十分な目 標である。

しかし、それでも今からこの削減目標を達成するのは、これまでの手法のみで は困難と考えられていたが、今回のパリ協定で合意された目標は、これより格段に厳しい 削減努力が要求されることになる。

 

6.このような厳しい現状を踏まえると、日本は「低炭素社会」というより、むしろ低エネ ルギー消費の徹底と再生可能エネルギーの大幅活用を推進する「脱炭素社会」に踏み出す ことを国内外に明確に示した上で、これまでの対策と歩みを総点検し、気候変動時代にふ さわしい、新しい経済社会を構築する決意が必要である。

 

7.そうした社会の大転換を行うには、技術の革新や一部の政策の手直しだけでは不可能で あり、気候変動時代を乗り越え希望の持てる人類社会を築く上で何が最も重要かといった 価値の転換と持続可能な社会の将来像の形成、それを促す学校や社会における教育を立て 直すことも不可欠である。

さらに、これまではエネルギーや環境問題に積極的に関与して こなかった層も含む社会の全てのステークホルダーの参加が必要であり、その重要なコー ディネーター役としても、NPO/NGO を位置付けてしかるべきである。

2015.12.18

                                           グリーン連合

(以上) グリーン連合は 2015 年 6 月 5 日に設立した環境 NPO/NGO の連合組織で、会員団体は以下 の通りである。 アクト川崎、アサザ基金、A SEED JAPAN、足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ、アトピッ子地球 の子ネットワーク、雨水市民の会、荒川クリーンエイド・フォーラム、岩手環境カウンセラー協議会、エコメッ セ、エコワーク実践塾、ezorock、FoE Japan、エルザ自然保護の会、おおいた環境保全フォーラム、オーフスネ ット、おかやまエネルギーの未来を考える会、沖縄リサイクル運動市民の会、化学物質による大気汚染から健康 を守る会、河北潟湖沼研究所、環境エネルギー政策研究所、環境市民、環境生態工学研究所、環境ネットワーク くまもと、環境ネットワーク埼玉、環境パートナーシップ会議、環境文明二十一、気候ネットワーク、グリーン コンシューマーおおず、グリーンピース・ジャパン、原子力資料情報室、小平・環境の会、サークルおてんとさ ん、埼玉エコ・リサイクル連絡会、埼玉西部・土と水と空気を守る会、サステナビリティ日本フォーラム、さや ま環境市民ネットワーク、シニア自然大学校、市民科学研究室、市民電力連絡会、JUON(樹恩)NETWORK、 情報公開クリアリングハウス、食政策センター・ビジョン21、森林資源活用バンク、全国小水力利用推進協議 会、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、高木仁三郎市民科学基金、ただすのもり環境学習研究所、地球 環境市民会議(CASA)、地域環境デザイン研究所 ecotone、地球と未来の環境基金、地球・人間環境 フォーラム、 中部リサイクル運動市民の会、つくば環境フォーラム、トキどき応援団、中野・環境市民の会、菜の花プロジェ クトネットワーク、熱帯林行動ネットワーク、バイオマス産業社会ネットワーク、ピースボート、ひらつかエネ ルギーカフェ、びわこ豊穣の郷、北海道グリーンファンド、水・環境ネット東北、緑の大阪、みどりの市民、緑 の地球ネットワーク、未来の世代へ捧げる会、森の生活、八ツ場あしたの会、有害化学物質削減ネットワーク、 容器包装の 3R を進める全国ネットワーク、よこはま里山研究所、ラムサール・ネットワーク日本、レインボー (11 月末時点 74 団体)